逆襲をかける電子写真

オフセットを始めとするアナログ印刷に取って代わるデジタル印刷技術はインクジェット技術だというのが風潮となっており、技術の本質を充分理解していない多くの印刷業界人の意見のようであるが、はたしてそうだろうか?インクジェット方式のプロダクションプレスの試作機が数モデル初めて展示されたのがdrupa2008で、多くの印刷機械メーカー、プリンターメーカーやベンチャー企業がこぞってインクジェットプレスの試作機の展示を行ったのはdrupa2012であるが、ほとんどの製品が高速でB2サイズ/20インチ幅以上の大判用紙対応であった。drupa2016で展示されていたインクジェットプレスは印刷速度、用紙サイズ、アプリケーションが更に多様化してはいたが、現在はまだインクジェット黎明期と言える。特定印刷用途には、すでに多くのプロダクションインクジェット製品が欧米を中心に導入されているが、本格的普及に必要なオフセットを始めとするアナログ印刷技術を凌駕する様になるには、かなり長い道のりが有ると断言出来る。

インクジェット技術のプロである私が言うのも何だが、日本国内印刷会社が小ロット印刷、バリアブル印刷を考える時に、もっと学ぶべきは電子写真技術や製品の事である。まず用紙サイズがA3ノビサイズ以下である事をオフセット機とのすみわけと割り切った場合に、残る課題は何か?電子写真方式プロダクションプリンターのルーツは、オフィス内で使われたていたMFP ( Multi-Function Peripheral )すなわち複合複写機である。しかし、企業内印刷用として生まれたMFPに求められていた性能・機能とプロダクションプリンターに求められる性能・機能とは、当然大きな隔たりが有る。

特に、オフセット印刷で製作された印刷物との違いが一番大きな課題として挙げられるが、オフセット印刷と比較して電子写真方式に指摘されている問題点を以下に列挙する。

  • 印刷品質と質感
    • 粒状感の無い高精細プリント
    • 256階調以上の諧調表現
    • 用紙に無関係なトナーの光沢(ギラツキ)
    • 画像品質の安定性(刷り始めと刷り終わりでの差)
  • プリントスピードとスループット
    • プリントスピードが遅い
    • セットアップ時間が長い
    • ファーストプリント時間が長い
  • 印刷用紙と給紙搬送の安定性
    • 使用可能用紙の厚さ
    • 用紙表面の表面粗さ(凹凸)への柔軟性が無い
    • 多種多様な用紙への安定的な給紙搬送が不安定
    • 両面プリント時の表裏見当合わせ精度が悪い
  • 定着時の用紙変形と後加工適性
    • カールによる変形
    • 伸び縮みによるサイズ変化
    • 折り曲げによるトナーの割れ
    • 再加熱によるトナーの相手面への転写

上述した課題は過去10年間ほどの間にほとんど解決している。その理由や根拠を詳述したのが「逆襲をかける電子写真」レポートである。ご興味のある方はダウンロードしてご覧ください。